とくに若い世代がTVを見なくなって、それはだいたいがインターネットやスマホの普及のせいにされてきた21世紀。
しかし、それはたんにスマホをながめている時間が増えたぶん、TVを見る時間が削られた、というレベルの話ではない。TV業界以外のビジネスにかかわる人間も、理解しておく必要がある問題なんである。でないと、自分の仕事において、ネットやスマホとのかかわり方を誤ってしまう。
勝てた理由をわかってないと次は負けてしまう
なのに、TV業界の大半の人間は、いいかげんな対応しかしてこなかった。そのうち、リーマンショックによる不景気が訪れて、スポンサーが減ると、その直接的なダメージばかり嘆いていた。努力不足を棚に上げて。
こうした環境の変化はいつの時代も起こっている。TVだって、登場したときは、映画の観客を奪ったと言われた。映画は最盛期の10分の1にまで観客が減り、おわるおわると言われながら、なんとかつづいている。
このとき、なぜTVが映画に勝てたのか、なぜ完全に息の根を止めることまではできなかったをちゃんと考えておけば、いまのような事態にはならなかったはずだ。
「新しい」に勝てるのは「おもしろい」
映画の黄金時代、黒澤明監督作品に代表されるような名作が生まれる一方で、低レベルな作品も多数あった。いまで言えば、TVの2時間ドラマ、サスペンスの類だ。例外もあるだろうが、いまTVでやっているあれを金を払って見たいだろうか?
そう。TVに奪われた映画の客は、奪われて当然の部分が奪われたんである。ただ、映画には、過去の名作とそれを見た記憶という遺産があり、わずかながらでも、おもしろい新作が見られたから、なんとかつづいた。
コンテンツの質を上げる作業をせず、商売に走り、目先の流行だけ追いかけ、調子が悪くなったら、時代のせいにする……なんてことをやっているかぎり、新しいものが出てきたとたんに、とってかわられる。