『おかんメール』という本が売れていて、出たばかりの『4』は初版から25000部で3刷までいってる。累計では、35万部を超えた。
誤変換がウケる仕組み
内容は、母親からのメールでじっさいにあった誤変換を笑おうというもの。誤変換ネタじたいはワープロという機械が登場して以来ある古くさいものだが、Web上では、定期的に話題になる。このシリーズは「母親」に特化したところがヒットの原因だろう。
とくに「おかん」という呼び名がしっくりくるタイプの母親は、ふだんから、言いまちがいや思いちがいの宝庫である。その上、機械にうとく、書いた文章も読み返さない、という条件が加わり、しかも、送られた側の手元に残るので、公開しやすいこともある。
たとえば、「仕事」と打ったつもりの文章が、「死後」になっている状態で送られてきたのを笑うのが基本形だ。
2つの言葉にギャップがあるほど、おもしろい。「仕事」の話と「死後」の話ではぜんぜんちがう。ちなみに、我々が書いた原稿の下書きに、おなじまちがいがあったのをたまたま気づいたばかりだ。厳密に言うと、これは「誤変換」なのか、という疑問は残る。入力の段階で「と」がぬけての変化だから。ただ、いまは変換予測機能があるので、それで押しまちがえたのなら、誤変換だけど。いずれにせよ、手書きではありえないミスだ。
通過儀礼である誤変換はくり返し流行る
いまでも完全に死語にはなっていない「おやじギャグ」というダサい言い回しで、中高年男性のダジャレを否定するのがいっとき流行ったが、誤変換だって本質はダジャレである。自分の頭で考えなくていいぶん、さらに低レベルとも言える。なのに、変換機能が一般化されたことによって、ダジャレそのものの評価は一層低くなった感がある。いずれにせよ、ダジャレも誤変換も、センスのいいもの悪いものがある。
誤変換の場合は、変換後の文章がそれなりに意味が通っていて、同時に、ナンセンス度が高いほどセンスがある。
母親からのメールがおもしろくなりやすいのは、母から子へ送るメールの内容の大半が日常的な、ささいなことだからだ。そこに不釣り合いな言葉が誤変換によって登場するから、おもしろい。
メールを使いはじめただれもが経験するおかしさなので、定期的にブームがくるのだ。
『おかんメール4』 ⇒ 詳細はこちら
P.S.
この手のネタはネット上にあふれているので、はじめ企画にあがったときには、「売れない」という声があったという。知ったかぶりのヒョーロンカ気取りを相手にしてはいけないという教訓だね。無料情報ばっかりあさってるやつと本を買う人種は別物ということだ。電子書籍だと、どのような売れ行きになるかということは興味のあるところである。
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