本を1冊書いて出版しようというとき、文章量はどのぐらい必要なのだろうか。新書版などでは、一般に300枚と言われる。少なくとも250枚。10~12万字だ。これが電子書籍となると、少しちがう。
電子書籍はデジタルデータだから、ページ数をどうするかは自由だ。1ページからでもOKだし、何万ページもあるものだって作ろうと思えば作れる(読んでもらえるかはべつとして)。
ページ数だけでなくファイルサイズにも注意
1ページの本と聞くと、奇妙な感じがするかもしれないが、会議の資料なんかは1枚のPDFのこともある。あの感覚だと思えばいい。ただ、それを販売して、読者が納得してくれるか、という問題もある。
現実には、電子書籍のページ数の下限と上限は発行するシステムに依存する。通常は、ページ数ではなく、データ量の形で決められている。画像データが多くなれば、そのぶんデータ量も多くなる。
アマゾンKDPの場合、アップロードできる原稿ファイルの最大サイズは650MB。
楽天KOBOライティングライフではEPUBファイルのみで100MB以下でないと、アップロードすることができない。
こうして、あたえられた範囲内で、ページ数を決めることになる。アマゾンだと、その電子書籍を紙の本にした場合、何ページに相当するかということを独自に計算して、販売ページに表示している。
電子書籍は紙の本より短いページ数が好まれる
電子書籍を個人出版する場合に、ページ数(文章量)をどうするかということは、読む側の意識とのかねあいがある。出す側がどうしたいかだけでは、商品として通用する電子書籍にはならない。
現段階においては、電子書籍は紙の本より短いページ数が好まれるようだ。電子書籍オリジナルだと、数十ページ~100ページ前後のものが売れている。今後の技術革新しだいでは状況が変わるかもしれないが。
Kindleなどの電子書籍端末が発売されてまもないころ、ユーザーは案外、年輩の人たちが多いことが話題になった。デジタル機器だから、若い連中が多いのかと思ったらそうでもなかったのだ。
理由のひとつに、文字が大きくできるからというのがあった。文庫本などの文字が小さくて読みづらいという声は昔からあった。あとは本の収納場所を考えなくていい点も、本好きには利点と映ったのだ。
電子書籍の利幅は価格設定と印税率の関係で決まる
ページ数を決定するには、内容に見合った分量(文字数)かという点が最重要である。それ以外の要因として、読者のニーズと価格の問題がある。価格に見合った分量(文字数)かということだ。
ビジネスにおいて、非常に重要なポイントとなってくる価格設定。これしだいで、売れ行きがぜんぜん変わってくるというのは、電子書籍の場合もおなじだ。では、どのようにの価格がなされているのだろうか。
価格と内容のバランスを見つつ利益が最大化するポイントをさがす
まず、通常の出版社が電子書籍を出すときだと、すでに紙の本が出ている場合は、2割以上安い価格をつけろ、というのがアマゾンの通達だ。例外はあるが、これがまずベースのラインと考えられる。
安くしたら、紙の本より電子書籍の方が売れる率は高まるわけで、これはアマゾンが自分のところで売れて欲しいから、ということだ。安くなった分を負担するのは、出版社の側なんだからね。
ただ、既存のビジネスとの関係をおいておくとすれば、電子書籍は製本コストや流通コストが紙の本みたいにかからないので、安くしたぶん、出版社の利益がまるまる減るというわけではない。
もうひとつ、買う側の視点もある。モノとしての本が手に入るかどうかの差が出てくるので、そこが反映されていないと、納得しづらい。一般読者でも、紙の本は転売して、売上げを次の購入にあてる人が多い。
個人出版における価格設定は、
利幅×販売部数=粗利益
という式で、利益が最大化するポイントをさぐることになる。が、それだけじゃない。
価格と内容のバランス=読者の満足感
印税率は35~70%
では、電子書籍の利幅はどの程度になるのだろう。アマゾンKDPや楽天KOBOといったプラットフォーム(販売サイト)では、価格設定によって、還元される%がちがう。
この%を「印税」と呼ぶ。権利ともつ者に払う対価(ロイヤルティー)の意味だ。が、電子書籍では出版社(個人出版ではキミのこと)の粗利ということでもある。個人で1~10まで自分でこなすなら、印税と考えていいが、経費はこの中から払う。
アマゾンKDPと楽天KOBOの最低価格(日本円)と印税率はこんな感じ。
KDP 99円~ 35%
KOBO 100円~ 45%
書籍の著者印税の10%よりかなり高い。しかも、アマゾンなら250~1250円にして、KDPセレクトに登録すると、印税率は70%になる。楽天も価格で%が変わる
KDP 250円~ 70%
KOBO 299円~ 70%
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