書評(ブックレビュー)と読書感想文はちがう。我々の考えでは、批評ともちがう。ひとことで言えば、推薦文である。対象になっている本を買おうかどうしようか迷っている相手、あるいは、まだその本の存在に気づいていない相手に対して、
「読んだ方がいいよ」
と、おすすめする文章だ。しかし、このあたりプロでも区別があいまいなようで、文庫本の解説などで混乱している人を見かける。いまどきは、ブログやSNSなどで読んだ本について書く機会も多く、ネットショップなどのカスタマーレビューまで含めれば、かなりの人がじっさいに書いたことがあるはずだ。また、会社の研修や学校の授業で、無理やり書かされることもある。研修の場合は読者が特殊なので、純粋な書評とは言いにくいが、共通点はある。
「悪口は言えない」
ってことだ。研修担当者がよかれと思って読ませた本、とくにそれが社長の書いた本とかだと、どんだけくだらない本でも、ボロッカスにけなす勇気のある人は、まあ、いないだろう。その会社で働きつづける気ならね。おなじようにプロのライターが書評欄を任されて、編集者から取り上げるよう依頼された本を悪く書くことは、まず、ない。
「つまんない」
と言うのは、仲間内での会話にかぎる。というと、ウソを書くのかと誤解する人があるが、ちがう。レビューとは、ホメる芸なのだ。たとえ、個人のブログでも、公けに発表する以上、悪口は書けない。なんでも自由に書けるんじゃないのかって? それはレビューをわかってない人が言うセリフだ。
本書では、単行本に収録されたような評価の高いレビューについても解説もするが、とりあえず、ブログの書評あたりをイメージして話を進めていくことにする。
(もくじ)
第1章 書評のスタンスと基本構成
本好きな人たちにすすめたい本を選ぶ
人気投票からこぼれ落ちるものがある
プロの批評は業界向け
目もあてられない書評の両極端
覚え書き的な読書日記は書評ではない
トピックが思いつかないときの方法
引用は全体の3分の1まで
結論はなくてもいい第2章 書評のお手本についての書評
切り口や視点を参考にする
意見より具体的な内容を
すでにある形式を得意分野に応用する
自分の立場を押しつけない
完成度以外の評価基準
要約だけでは伝わらないものもある
ネタバラシをしない
読む気になるよう翻訳する第3章 ファンができる書評テクニック
その気にさせるパワー
自分PRで他人をけなすのはやめよう
(まえがき)はこちら ⇒ 『書評の書き方: ベストセラーを作るブックレビュー』