明快な文章の書き方──災害時のLINEやSNSに学ぶ


文章を書くときには、明快に(=わかりやすく)書くということが鉄則だ。とくに、事実を伝える文章においては、読み手が誤解しないように書かなくてはならない。

では、具体的にどういった点に気をつければいいか。事実の伝達が命にかかわりかねない災害時のLINEやSNS、書く機会が多いビジネスメールを例に説明していこう。

■読者に話しかけるように書く

文章を書くときに「読者に話しかけるように書くといい」という話を聞いたことがないだろうか。これは文体のことではなく、内容の伝達に関して述べたものだ。

ここで、LINEやSNSを取り上げるのは、読者の存在を意識しやすい文章だからだ。だれかに向けて書く感覚をつかんでおけば、一般の文章を書くときにも応用がきく。

具体的な例があった方がいいと思うので、我々が内輪でやりとりした災害時のLINEの文章を取り上げて話を進める。まずは、やりとりのきっかけになった災害について。

……2018年9月4日、台風が四国に上陸し、速いスピードで北陸方面へ抜けた。四半世紀ぶりと言われた強力な台風で、激しい風雨による被害が近畿各地で相次いだ。

■実例:災害時のLINEの文章

ということで、翌朝のLINE──

A「そっち、風がすごかったみたいやけど、生きてる?」

B「生きてる。明け方まで停電やった」

内輪のメールだから、簡潔なやりとりだが、「生きてる?」というのは、わざと大げさに言ってる(死んでたら、返事できへんがな)。生存前提のユーモラスな表現だ。

フツーは「だいじょうぶ?」あたりだろう。ホントに生死不明のときに、「生きてる?」はNGである。こうした短いやりとりにも、「冗談の言える相手」という関係性が出る。




結論から書くと文章が明快になる

例文のポイントはBの答え方で、「生きてる?」に「生きてる」と答えている。「だいじょうぶ?」なら、「だいじょうぶ。ありがとう」だろう。つまり、結論からだ。

人はたいへんな思いをすると、つい、こんなにたいへんだったよぉ、ということを強調したがるが、相手は安否確認をしてきているのである。無事を伝えるのが先決だ。

■修正例:イメージしやすい表現を使う

たいへんさを強調するのは、そのあとである。人は他人がひどい目にあった話を聞くのが好きだから、無事だったのなら、どうたいへんだったかを伝えるのもサービスのうちだ。

例文で、Bは「明け方まで停電やった」と述べている。「あなたは風のことを気にしてるみたいだけど、停電という悲劇が私を襲ったのです」という意外性の提示だ。

ただ、この例では、Bの答えは簡潔すぎて、すごさを伝えきれていない。修正すると──

「午後2時から明け方まで14時間以上も停電で、なんもできんかった」

まあ、文末はあっさり「こまった」でもいいが、この方がこまった感が強調されて、読む側もイメージしやすい。さらに、つづけるなら、どうこまったかの詳細だろう。

■簡潔さよりも明快さを優先する

この修正版のキモは「午後2時から」という文言の追加である。停電していたことを知らない相手なら、何時から停電していたかもわかっていないのである。

「午後2時から」とひとこと加えるだけで、昼の暑い盛りから夜のいちばん電気を使う時間帯に停まっていたんだね、ということが伝わり、たいへんだった感が強調される。

このように、明快な文章を書くためには、文章は簡潔に(=短く)書く、というもうひとつの鉄則に反するケースが多い。しかし、事実を伝えるのに必要な文言はつけ加えよう。

一方、「14時間以上」の方はなくてもいいが、あった方が親切という類。「ちょっとした停電じゃなくて長かった」と書くより、具体的かつコンパクトである。




具体性を加えて文章を明快にする

ここまでの内容を整理してみよう。明快な文章を書くためには、結論から書く。そのあとの内容に関しても、大づかみの話をしてから、必要なら詳細の説明に移る。

そして、多少簡潔さを損なうことになってもいいから、具体性をもたせる文言を加える。読者にイメージが伝わりやすい言葉を使い、抽象的な言いまわしはできるだけ、さける。

■読者の知りたい情報がなにか意識する

つまり、読者の存在を常に念頭におき、相手が知りたがっていることを書くようにする。例文のような災害の安否を問う内容に対しては、まず無事であることを伝える。

無事とわかれば、次に知りたいのは「でも、たいへんだったんじゃない?」だろうから、その興味に応えるような詳細を教える。停電じゃなくても「怖かった」でもいい。

じっさい、ツイートしてた人の中には「1日中救急車のサイレンが鳴っていて」と書いていた人もいた。そう書けば、より具体的に怖さが伝わる。

あるいは、例文のAは風のすごさを問うているから「(地域名)停電」で検索したら、画像や動画があがっているよ、といった情報を教えるのもいいだろう。

■参考例:言葉がたりずにツイート炎上

ツイッターで言えば、この災害時、関西電力の停電情報サイトがパンクしていたのだが、「更新できていません」と文言を見ずに「○○市が載っていない」と怒る人が続出した。

怒りの電話が殺到したとおぼしく、かなりたってから、関西電力はページの表記を通常とはガラッと変えて、「更新できていません」と結論を前面に打ち出したものにしていた。

また、一般人で「○○市、まだ停電してるの(笑)」とツイートした人が怒りを買っていた。不安な気持ちですごす人が大勢いる中、「(笑)」は不謹慎ということだ。

このツイートは、読者のことを考えていない、なにが(笑)なのか具体的ではない、結論が見えない、という点において、我々が述べてきたこととすべて真逆の悪例だ。