「好き」を仕事にする「ひとり出版社」という働き方

Pocket

余暇や自分の時間をどう過ごすか、ということは、働いている日々との対比で語られることが多い。ところが、自分らしいライフスタイルを優先して働く人が増えている。

といっても、派遣労働などで自由な時間を確保することではない。自分のやりたいことや「好き」なことを仕事にする人たちだ。その例として、「ひとり出版社」を取り上げる。

自分らしい働き方として注目される「ひとり出版社」

 『“ひとり出版社”という働きかた』

 以前から新聞などでも取り上げられてきた「ひとり出版社」にあらためて注目が集まったのは、河出書房新社が『“ひとり出版社”という働きかた』を出したときだった。

 発売後には、書店で平積みになっていた。タイトルを見てもわかるように、起業本というよりは働き方本のジャンルに属する。当事者たちに「起業」と言う大げさ感は少ない。

 『“ひとり出版社”という働きかた』はインタビュー中心の構成だが、ピックアップされている発言も、生き方のヒントが中心。

 これまでの働き方に疑問をもった人が転機を迎えて、自分らしい暮らしを手に入れるために、「ひとり出版社」をはじめる。ある人物にとっては、「愉快に」ということがキーワードになっている。

どういう人が「ひとり出版社」をやっているのか

 「ひとり出版社」をやっている人はひとりではない。ある程度の段階にくると、「ひとり」ではなくなってくる場合もあるけれど、小規模で個性的であることに変わりはない。

 さすがに前職は出版関係か、TV局の事業部で本作りにかかわっていたというようなパターンが多いが、ほとんどがなりゆきや勢いではじめてしまったような人たちばかりだ。

 通常の起業の話だと、これまでの仕事で得たノウハウや人脈を活用し、事業計画もバッチリ立てて、起業セミナーに通ってみたいな話になるだろう。

 しかし、「ひとり出版社」をやっている人たちは、いまの出版界に疑問をもち、これまでのやり方を変えたいと思って……というパターンが主流だ。金銭欲がうすい。

OLやサラリーマンにもできる

 過去のスキルを活かす場面は、「ひとり出版社」ないし数名での出版社を軌道に乗せるまでの収入源を確保する方法としてだ。それをきっかけに人脈や可能性を広げている。

 つまり、「ひとり出版社」は、金もうけではない。業界人になることが目的でもない。問われるのは仕事の中身。自分のやりたいことをやろうよ、という提案なのだ。

 となれば、業界関係者でなくても、本好きなOL、本作りに興味のあるサラリーマンだって、チャレンジ可能だ。「やれそうだ」と思うシロウトが増えれば、ブームになる。

 自分の生き方として、農業を選択する若者が多くなったのとおなじ流れにある。「ひとり出版社」がある程度軌道に乗っている姿は後続の人たちに勇気をあたえるだろう。

  『“ひとり出版社”という働きかた』 ⇒ 詳細はこちら