ハリウッド・メソッド(脚本術)という言葉というか方法論が流布している。現在知られているそれは、シド・フィールドの提唱したものがもとになっている。
その基本は3幕構成ということだが、なにも3幕構成はシド・フィールドの発明ではない。アリストテレスのハウトゥ本にも書かれている古代ギリシアでも知られた作劇法だ。
ビリー・ワイルダーの脚本も3幕構成
そうした3幕構成を映画向けにアレンジしたものをハリウッドのスタジオは使ってきた。だから、シド・フィールドが講義をはじめる以前から脚本家は3幕構成に言及している。
ハリウッドを代表する脚本家で、監督としても数々の名作を作ってきたビリー・ワイルダーも同様だ。キャメロン・クロウとの対談本の付録で、コツを開陳している。
題して、「ワイルダーからシナリオライターに与える助言」。3幕構成の基本はこの短い要点に尽きている。ハリウッド・メソッドはこれを詳細にテンプレ化したものと言える。
全部で11ある助言のうち8つをピックアップして引用する。省略した3つは、心がまえ(ハリウッド流の考え方)について述べたもの。興味があれば、ぜひ原文でどうぞ。
ビリー・ワイルダーの脚本メソッドからの引用
3・主人公の行動は直線的にすっきり展開させること。
4・どこに向かっているかつねに心得ておくこと。
5・ストーリーポイントを隠す手際が巧妙であか抜けていればいるほど、優れたライターである。
6・第三幕で行き詰まるのは、第一幕に問題があるからだ。
7・ルビッチからの助言──答えは観客に出させること。そうすれば放っておいても観客の心を虜にできる。
8・ナレーションは、観客の目にしていることを語ってはいけない。新しい何かを語ること。
9・第二幕の幕切れはエンディングに直結する。
10・第三幕はテンポにおいてもアクションにおいても最後の瞬間までたたみかけること。最後の瞬間までくれば……
(引用元:『ワイルダーならどうする?』キャメロン・クロウ)
↓参考文献↓
『ワイルダーならどうする? ―ビリー・ワイルダーとキャメロン・クロウの対話』
メインの対談の方は、脚本術やハリウッド・メソッドついて語ったものではないが、自身も映画監督である
が各作品について詳細なインタビューをおこなっている。
とうぜん、脚本の書き方や映画づくり、女優の素顔や業界裏話といったことに興味のある人間には、こたえられない内容となっている。
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