ビリー・ワイルダー監督を知っているだろうか? という問いかけが失礼きわまりないほど、ハリウッド映画史に残る才人だが、いかんせん最盛期が40~50年代と少し古い。
そこで、脚本家出身の監督らしいストーリーテリングのうまさが光る映画8本とオマケで2本を紹介する。どれも映画作品としての評価も傑作と呼ばれるものばかりだ。
ビリー・ワイルダー監督脚本の傑作映画 シリアス編
『熱砂の秘密』(43)
戦時中に作られた北アフリカ戦線が舞台のアクションもの。双葉十三郎が「膝をたたいて乗り出すほど面白かった」と語っている。
『深夜の告白』(44)
ジェームズ・M・ケイン『倍額保険』が原作のミステリ映画。当時のハリウッドではタブーに近い内容だった。緊張の連続が見事。
『サンセット大通り』(50)
脚本家が主人公。老残の大女優をそのモデルのようなグロリア・スワンソンが演じたことで、有名。映画史に残る傑作とされる。
『情婦』(57)
アガサ・クリスティの有名な舞台劇『検察側の証人』を巧みに映画化。ほとんどの観客が最後にアッと言わされることになる。
ビリー・ワイルダー監督脚本の傑作映画 コメディ編
『麗しのサブリナ』(54)
オードリー・ヘップバーンの魅力が全開。『ローマの休日』(W・ワイラー監督)もおもしろいが、こちらはギャグまでオシャレ。
『七年目の浮気』(55)
マリリン・モンローの「スカートふわ~っ」がある映画。ボケたキャラクターも含めて、イメージを定着させた。原作は舞台劇。
『お熱いのがお好き』(59)
アメリカ人が最も好きなコメディ映画のひとつ。ギャングに追われるバンドマンが女装して、女だけのバンドにもぐり込み……。
『アパートの鍵貸します』(60)
アカデミー賞も受賞した人情喜劇。ジャック・レモンがシャーリー・マクレーンの手鏡を見つけるシーンは脚本のお手本。
ビリー・ワイルダー監督脚本の傑作映画 番外編
『ニノチカ』(39)
これは事実上の師匠であるルビッチ監督作品で、脚本家のひとりがワイルダー。ソ連共産党の堅物イメージを笑い飛ばす恋愛モノ。
『シャーロック・ホームズの冒険』(70)
ワイルダーは原作を巧みに料理するのが得意だが、これはオリジナル脚本。コナン・ドイル風を見事に再現したパロディ作品。
『シャーロック・ホームズの冒険』⇒ 詳細はこちら
【関連記事】
ハリウッド脚本メソッドの源流:ビリー・ワイルダーによる助言8選
ハリウッド・メソッドの問題点