なにをどこに書くいったルールのこまかいところは組織ごとにちがうので、ここでの解説を理解した上で、じっさいの日報にあてはめて欲しいが、普遍的なルールもある、
そのルールは、日報の書き方というよりも文章の書き方にまつわるものだ。他人に伝わりやすい文章というのは、日報でもそれ以外の作文でも、原則おなじである。
所感に事実を記すときの例文
伝わりやすい文章の第一は、事実と意見を分けて書くことだ。日報で言えば、所感を書くとき、とくに、このことに気をつけなければならない。
「お客様は商品の交換を望んでいます」
と書いた場合、それはお客様がじっさいに言ったこと(事実)なのか、お客様の態度から想像したこと(意見)なのかわからない。
そのあたりの区分けがきちんとわかるように書く。そして、それが意見なのだとしたら、裏づけとなる事実もいっしょに書かなければ、説得力がない。
「商品に不良があり、お客様が来店されました。レシートを持参の上、返金して欲しいとのことでしたが、おなじ商品の在庫があったので、交換対応で納得していただきました」
日報で省略してもいいこと
伝わりやすい文章の第二は、事実を説明する場合に、順序を意識する。基本は大きなものから小さなものへ、全体像から細部へと話を進めていく。
たとえば、店の説明をするのであれば、どこにあるなんというビルの何階にあるどのぐらいの広さのどういう形の店で、そのいちばん奥の棚に……という具合にしぼっていく。
ひとつのモノであっても、まずは全体の大きさとか形とかといったところからはじめて、細部の特徴などに移っていく。そうすると、相手はイメージをしやすい。
もっとも、日報は身内に向けて書くものだから、相手もよく知っていることは省略してかまわない。店員が店長に向かって、自分の店の全体像を説明する必要はない。
日報という文章のテーマ
伝わりやすい文章の第三は、アクションとリアクションをセットで書くこと。行動には必ず反応がある(無反応という反応も含めて)。どちらか一方ではなく両方書く。
「こういう提案をしたが、こう断られた」
「こういう質問をされて、こう答えた」
という書き方をすることで、筋道がハッキリし、読む側もより正確な判断がくだせる。
文章には、文脈がある。つまり、ひとつひとつの文は前後の流れの中で存在する。そのため、書かなくていいこともあるし、書かなくてはいけないこともある。
他人に読ませる文章というのは、なにかしら書くべきことがあるから書く。報告書なら報告するに値すること──それがその文章のテーマである。
事実を土台にした文章を書く
テーマというと、自分の意見や立派な考えみたいなものだと考えている人が多いが、そうではない。その文章の核心にあたるもの=いちばん伝えたいことがテーマだ。
したがって、業務日報の場合、「本日、特記事項なし」と記して、それですませられるなら、それで十分。だが、それだと怒られる職場もあるよね。
その場合は、読んだ相手が「特別問題となるようなことはなかったんだな」と判断できる材料(=いつも通りの状況や作業)を事実として記せばいい。
ここで言う「事実」とは、他の人間が調べて客観的に確認できるものだ。たとえば、
「川のほとりにキレイな花が咲いていた」
という文の「キレイ」は意見であって、事実ではない。
例文:「寒い」事実をどう書くか
次の2つの文のうち、どちらが「事実」でどちらが「意見」かわかるだろうか。
「今日の最低気温は9℃だった」
「今日はとっても寒かった」
答えは、前者が事実、後者が意見だ。
日報には、事実を書くべきだと言った。では、キミがもし、服屋の販売員だった場合、「9℃だった」と書くべきだろうか。
答えは、ノーだ。少なくとも我々なら、そのようには書かない。かわりに、次のようなことを日報に書くだろう。なぜ、このように書くのか考えてみて欲しい。
「今日は昨日と比べて、厚手のコートを着ているお客様が3倍くらいに増えました」
こういう事実を目撃した場合にかぎるが、これなら「寒い」と書かなくてもわかる。
関係者にとって有用な事実を伝える
事実なら、なにを書いてもいいということではない。日報には、なるべく、勤務している職場やキミ自身の職務に関係している事実を拾い上げて書くようにする。
差し出がましい「意見」より「事実」の方が役に立つ。それを読めば、上司や関係者が状況を理解でき、必要な対策を打つための判断材料となる事実を伝える努力をする。
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