文学全集は1冊に複数作品が収録されているから、「5冊」ではなく、「5作品」としてある。身近に文学全集がなければ、
「○○文庫のおすすめ5冊」
でもいい。複数作品をまとめて紹介するのは、ブログや新聞の書評欄でもよくある。
枚数は2~5枚で、書きやすい分量でいいけど、書いてみたら、3.5枚になりましたとかではなくて、2枚なら2枚、3枚なら3枚と自分で決めて、まとめて欲しい。
では、自分で自分の書評を添削してみてくれ。ポイントは、1つのテーマなり切り口なりを用意して、それにそった形で紹介することができているかだ。全集そのものの編集方針や作品のセレクトをどうこう言ってもしかたがない。それならはじめから全集の紹介などせずに、自分のお気に入り作品を紹介すればいい。とはいえ、
「私が読んでおもしろかった5作品」
なんて有名人でなければ成立しない。
具体的に添削するときは、設定した切り口を効果的にするために、全体の配分をどうしたかが重要になる。
かりに、5枚使ったとしても、均等に割ったら、1作品あたり1枚(400字)しか使えない。これでは、書評らしい書評はむずかしい。
そこで、自分の切り口を説明するまえおきからはじめ、残りの分量で、5作品を紹介する形にするのが望ましい。
たとえば、世界文学全集におさめられた中から「ロマン主義」というキーワードで5作品ピックアップする、というような形をとるわけだ。まえおきでは、「ロマン主義」とはどういうもので、文学史的にどういう意義があり、作品の上ではどういう特徴があるか、各国での広がり具合はどうであったか、といったことを述べる。その上で、収録作の中から該当する5作品を選び、個々の作品を紹介する。
このときの代表的な配分は、5等分したときの400字のうちから、各100字を削って、計500字をまえおきにあてる。500字あれば、小論文程度のことは述べられる。要約は300字だから、ちょうどいい。
要約のかわりに解説でもいい。
「ドイツでは、ゲーテが代表で、この全集では『××』が収められている」
のように書いて、とくにロマン主義的な部分を紹介すればいいわけだ。
まえおきを書いた残りを5等分するとううのは、話をわかりやすくするためで、1作品を重点的に紹介するのでもかまわない。通常の書評と変わらぬ形で、4作品はタイトルだけか1行コメントの形で追記する。
この場合は、メインの1冊のおもしろさを伝えることで、ロマン主義小説全体に好印象をもたせ、残りの作品にも興味をもたせる。メイン1冊+解説がてらにサブ1冊+残り3冊のような配分でもかまわない。
以上の3パターンを理解しておけば、複数冊まとめ書評の用はたりる。ついでだから、奥の手を1パターン紹介しておくと、メイン0冊という方法だ。
我々が「ロマン主義」を紹介するなら、たぶん、『フランケンシュタイン』を使う。オーソドックスな文学全集なら、まず、入ってないだろう。しかし、作者のメアリ・シェリーはロマン派の詩人シェリーの夫人で、怪物のモデルはイギリス代表のバイロンだ。
書評の本質は、紹介した本を読みたい気にさせることだ。そのためには、紹介する本の内容にはいっさいふれないっていう手もありなんである。
これと真逆にあるのがネタバラシで、読者のことをまったく考えていない文章だ。
内容にふれない書評で気をつけたいのは、知識のひけらかしみたいな文章にならないようにすることだ。それは自慢であって、やはり読者のことを考えていない。
まとめ:複数冊同時に書評するときの4パターン
○まえおき+要約×5
○まえおき+解説×5
○まえおき+メイン1冊+残り4冊
○まえおき+メイン0冊+残り5冊
【参考文献】
『書評の書き方: ベストセラーを作るブックレビュー』
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