ニコニコ超会議に見るIT技術の逆輸入現象または現実の仮想化

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ニコニコ超会議をご存じだろうか。毎年、GWあたりにおこなわれるニコニコ動画のイベントだ。それ以前に、ニコニコ動画ってなに? というビジネスパーソンもいそうだ。

以下、ニコニコ動画および超会議の簡単な解説に加え、ニコニコ超会議というイベントをいちど見ておくことが、今後のビジネスを考える上で有用だという話をする。

一般社会に浸透するニコニコ動画

ニコニコ動画はひとことで言えば、ネットの動画投稿サービスだ。ネット動画というと、多くの人はYouTube やユーチューバーを連想するかもしれない。

おなじようなものだと言えば、それまでだ。じっさい、ニコニコ動画にアップしたコンテンツをYouTube でも公開している投稿者も大勢いるから、その差はなくなりつつある。

しかし、ニコニコ動画(略称・ニコ動)というと、ちょっと独特のニュアンスがあって、ここからさまざまな文化やクリエイター、あるいは、突然の人気者が誕生した。

たとえば、一般社会に少しだけ浸透したものに、小林幸子の件がある。ベテラン演歌歌手がネット民の曲を歌うという旧来のファンには意味不明の展開の裏に、ニコ動があった。

「踊ってみた」動画に踊るコメント

ここでニコニコ動画に関する個々の現象や独特の用語を詳述することはしない。乱暴な要約をすれば、ニコ動はコミケに代表される同人誌文化に近いニュアンスをもっている。

いっとき、ネット文化を代表するものとして、動画の上に流れるコメントの映像がよく使われていた。あれがニコ動であり、開かれたコンテンツという意味で、SNSに近い。

そんなニコニコ動画定番のコンテンツに「歌ってみた」動画や「踊ってみた」動画がある。自分の好きな歌や踊りをマネたものを動画で撮影し、投稿する。

『涼宮ハルヒの憂鬱』というラノベ界を代表する作品がある。その人気の一部はアニメ版のエンディングの振り付けを「踊ってみた」人たちによって支えられていた。

ネット空間を三次元に開放するニコニコ超会議

さて、本題となるニコニコ超会議であるが、これはニコニコ動画を運営するドワンゴがユーザー向けに仕掛けたイベントだ。ニコ動を生で体験できるとうのがコンセプトだ。

幕張メッセの巨大空間を疑似ネット空間と化し、そこでニコニコ動画由来のコンテンツを再現する。だれかの歌を「歌ってみた」り、そのようすを見たりできるわけだ。

ネット空間から飛び出し、動画ではなくリアルで表現し、観覧される関係。シニカルに見れば、それはたんなるシロウトのど自慢大会ではないかと言えなくもない。

しかし、考えて欲しい。かつてカラオケ機が発売されたのは、割りバシをマイクがわりにするより本格気分を味わいたいからだった。そこでは、テクノロジーは現実を補完する。

ニコニコ超会議では自分もコンテンツの一部と化す

ニコニコ超会議では、ニコニコ動画というネット空間(=IT技術)なしには存在しえない世界が先にあって、現実の方がそれになりたがっている。現実の仮想化と言ってもいい。

ニコニコ超会議の会場には、「歌ってみた」以外にもさまざまなコンテンツを再現しようとするステージやブースが同時多発的に展開し、動画を選ぶように来場者はそれを選ぶ。

しかも、観客としてながめるだけではなく、参加型、体験型のアトラクションもある。パチンコの試打をすれば、観客に見られる存在になり、グラドルやキャンギャルがはべる。

一般的な展示会(クルマの試乗とか)で順番待ちの人に見られている程度とはちがい、自分もコンテンツの一部と化す。さらに、生番組が作られ、ニコ動に配信される場もする。

家族連れで気楽に行けるカオスなイベント

マーケティングの世界で陳腐化した「モノからコト」へといった流れにも沿いつつ、それでいて、そこで起こっていることは、類似のイベントとは似て非なるカオスだ。

もちろん、イベントじたいはきちんと運営されているので、家族連れでも気楽に行ける。コスプレイヤーも多数参戦する。カオスと言って悪ければ、楽しいイベントだ。

■ニコニコ超会議2019開催概要

名称:ニコニコ超会議2019
日程:2019年4月27日(土)10:00~18:00
   2019年4月28日(日)10:00~17:00
会場:幕張メッセ国際展示場1~11ホール+イベントホール

料金
1日券:前売1,800円 当日2,300円
2日通し券 :前売のみ3,100円

ネット発!みんなで作る日本最大級の文化祭 登録会員数6,000万人を超える「ニコニコのすべて(だいたい)を地上に再現する」をコンセプトに開催する、ユーザーが主体となるニコニコ最大のイベントです。

 (引用元:ニコニコ超会議2019 | イベント概要

 
※この記事は、公式サイトの情報を参考に、過去の取材内容を加えて、作成しました。

●イベント主催者:ニコニコ超会議実行委員会 ⇒ ニコニコ超会議2019 公式サイト