シンガー・ソングライターで、アメリカ音楽業界のレジェンド(伝説的存在)であるボブ・ディランがノーベル文学賞を受賞した。これを機に、ボブ・ディランのどこがすごいのか、ビジネスの観点から考えてみたいと思う。理系のノーベル賞は「発明」「発見」に送られるが、ボブ・ディランが音楽のやったことも「発明」ないし「革新」なのである。
ロック音楽のメディアとしての可能性を広げたボブ・ディラン
ボブ・ディランの楽曲は、芸術的な面での質の高さによって、昔から評価されてきた。芸術の分野は「あとから」評価されることも珍しくないが、ボブ・ディランはリアルタイムで衝撃をあたえた。そのことがボブ・ディランの知名度を高め、結果的に、ビジネス面(レコード・セールスなど)での成功ももたらした。いったい、なにをやったのか。
ボブ・ディランの「発明」をひとことで言うと、ロックの世界にメッセージ・ソングを持ち込んだということである。ロックもまたメッセージを伝えられる媒体だと示した。
そんなのわかりきったことで、大騒ぎする理由がわからないという人は、後世の視点で評価しているからである。ロックンロールはもともとダンス・ミュージックだった。
ボブ・ディランによる詞の質的向上と時代の動きがからみあった
音楽にくわしい人は知っていると思うが、ボブ・ディランはもともとフォークシンガーで、突如、ロックシンガーに転身。当初はフォーク・ファンから反発を浴びた。しかし、ロックもまたアートフォームになりうるということで刺激を受けたのがジョン・レノンであり、彼らによる音楽的革新と「ラヴ&ピース」のヒッピー・ムーブメントが連動した。
ノーベル賞の授賞理由である、
「新しい詩的表現を生み出してきた」
の背景にあるのはそういうことである。現代詩的な抽象表現などはオマケにすぎない。フォークであたりまえだったメッセージをロック化したことで、さまざまな化学反応が起き、ポップ・ミュージックの主流はロックになった。見習うべきはジャンルの超越力だ。
代表作「ライク・ア・ローリング・ストーン」が収録されたアルバム
『追憶のハイウェイ61』 ⇒ 詳細はこちら