投票的感想とレビューのちがい


 レビューというのは、推薦文である。「オススメ」である。それがなぜオススメかという理由を書く。その理由として、内容面はもちろんだが、「こういう私だから」という情報が重要になる。そういう意味で、レビューは批評よりは、エッセイに近い。

キライなものを否定しない

 「私」に関しての情報は具体的にレビューの中に書く必要はないが、それが伝わるように書く。どういう「私」の情報を伝えればいいかは、レビューする対象によって変わる。

 子供のお弁当づくりに便利なキッチン用品のレビューなら、

「○才の子供がいる主婦」

 であることがポイントだ。一方で、

「ひとり暮らしのサラリーマン」

 にとってありがたいキッチン用品だってある。属性じゃなく、趣味嗜好が前面に出ることになる。我々が映画紹介するなら、「コメディが好き」という傾向がベースにある。泣ける映画には興味がない。

 レビューを書くとき、気をつけなきゃいけないのは、自分が好きじゃないからといって、対象を否定してはいけないってことだ。

反対意見と賛成意見と投票行動

 肯定的に語ることと世の中の流れに従うことはべつである。文章を書きたい気持ちの裏には、意見を言いたいという欲求がある。

「世間でいいと言われているものよりもっといいものがある」(反対意見)

「世間でいいと言われているところよりもっといいところがある」(賛成意見)

「世間でいいと言われているものに自分もいいと言いたい」

 というのは、リアクションである。一種の投票行動で、文章としての価値はアンケートに○をするのと変わらない。

 そこにある書き手の欲は、参加したい、共有したい、仲間に入れて欲しいというコミュニケーション関連のものである。読者に向いていない。読者は投票全体(人気の度合い)を参考にするしかない。
 
 
【参考文献】
 『書評の書き方: ベストセラーを作るブックレビュー』
 
 
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