【文章の書き方】読者の気持ちをつかむ地の文──文脈を意識して導入部を書く


文章には、文脈がある。話の流れを意識した表現を使うことで、読者の気持ちを強くつかむことができる。こんな出来事があったというような行動を書くときは、とくにそうだ。

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次に記す2つの例文を見比べて欲しい。書かれている内容はほぼいっしょだ。どちらを使うのが正解かは、あとにつづく文章で決まる。使い分け方がわかるだろうか。

例題:適切な導入部を例文より選べ

(A)電車に乗って、街へ出かけた。

(B)街へ出ようと思って、電車に乗った。

シンプルにするために、主語ははぶいているが、小説でもエッセイでも使える文章だ。

なにかのエピソード(出来事)を語る導入部だな、ということはわかるだろう。自分であとにつづく簡単なエピソードを考えて、ABどちらの導入がふさわしいか選んでみよう。

そのとき、なぜ、そちらを選んだのかという明確な方針がなくてはいけない。たとえば、次のような文章をつなげるとしたら、ABの使い分けはどうすればいいだろうか。

(C)突然、大きな声が聞こえたので、思わず、そちらに目をやると、中年女性が偶然出会ったらしい知り合いに話しかけている。相手の女性は小さな女の子を連れていた。

導入部はあとのシーンから逆算しよう

さて、例題の主人公(たとえば、私)は街へ出かける用事があるのだろう。買い物か友人と約束があるか、とにかく、それが主人公の目的である。

我々が示した(C)のパートは電車内でのエピソードである。読者の意識を「電車(に乗っている私)」に向けさせなければならない。この場合の導入にふさわしい。

(A)だと、文を読みおえたときに、読者の中で、主人公はすでに街についてしまっている。このあと、つづけるエピソードは街なかのものだ。少なくとも、ついた駅での話だ。

もっと言えば、あとあと「電車」が関係してくるとか、主人公のライフスタイルを示したいといった理由がなければ、前半は不要だ。電車云々はカットしてしまうのが正しい。
 
 
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