もくじ
・電子書籍を個人で出版するには:自費出版とのちがい
・電子書籍制作で用意するもの:機材&アプリ編
・電子書籍制作にかかる費用:作業編
・電子書籍を個人で出版するには:最初のステップ
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電子書籍を個人で出版するには:自費出版とのちがい
創作意欲のある人や新しいビジネスに興味がある人は「電子書籍を個人で出版する」ことに注目しているにちがいない。個人出版や自己出版、セルフ・パブリッシングなどと呼ばれている。ただ、ときどき、
「電子書籍の自費出版」
という表現が見られるのは、少々疑問で、自費出版って言葉が定着しているから、わかりやすくはあるけれど、電子書籍は自分で出すだけなら、基本的に費用はかからない。
個人出版はアマゾンのKDPが代表
電子書籍の個人出版が従来の自費出版とちがうのは、費用の面だけではない。電子書籍は個人で出版した場合でも、
「売れる」
ということなのだ。従来の自費出版だと、よっぽど知名度や実績がある著者でないかぎり、できた本を無料で配るか、知り合いに買ってもらうというケースがほとんどだろう。それが電子書籍の場合は、商業出版された本とおなじように売れるんである。
なぜなら、メジャーなネットショップがそういう仕組みを提供しているからだ。
○Amazon Kindle ストア
○楽天 KOBO ブックストア
○Apple app store
○Google Play
などが代表である。なかでも、アマゾンのKDP(キンドル・ダイレクト・パブリッシング)のサービスが提供されたことで、一気に広まった。
電子書籍なら見知らぬ客に手にとってもらえる
Kindleストアっても、特殊なものではないんである。アマゾンには「本」や「ミュージック」といったカテゴリがあるが、そのひとつに「Kindle本」ってのがあるだけ。フツーに商品としてならんである。アマゾンというネット上で、いちばん大きな書店に。
従来の自費出版だと、「書店にならべますよ」とうたっている業者もあるが、現実問題として、見知らぬ客に手にとってもらえる率は低い。アマゾンは検索結果で出てくる。
例として、アマゾンを中心に話を進めてきたが、楽天だって、アップルだって同様である。これがどれだけすごいことかは、ビジネスの世界を知っている人間なら、用意に想像がつくだろう。そのことに対して、出店料とか看板料みたいなものは、いっさい不要だ。
売上げが出たときに、ロイヤリティ(販売手数料)を払えばいいだけである。じっさいには、売上げから手数料が差し引かれて、支払われるといった形だ。
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電子書籍制作で用意するもの:機材&アプリ編
電子書籍を個人出版しようとしたときに、費用がかかるとしたら、どういった部分であるのかを見ていこう。
できあがりを確認するモバイル端末が必要
まず、電子書籍の制作じたいにかかる費用ではないが、パソコン、ネット環境などの部分があげられる。ビジネスとして見るなら、これらも経費として見逃すことはできない。しかし、個人レベルでやるなら、べつに電子書籍を出さなくっても、パソコン、ネット環境を使うって人は無視していいだろう。
ただ、電子書籍を制作したあと、仕上がり具合をチェックする端末は、できれば、用意いた方がいい。
アマゾンのKDPを例にとると、これじたいは、Kindleというアマゾンが出している電子書籍リーダー(端末)用のストアなのね、本来は。世間では、誤解している人も多いんだけど、Kindle向けに作られた(つまり、KDPで販売されている)電子書籍は他の端末でも読める。
たとえば、アップルの端末であるiPadで電子書籍を読もうと思ったら、app store で購入したものを読むのが標準。だけど、ちゃんとiPad向けのKindleアプリが無料で出ていて、それさえあれば、iPadでKindle本が読めるようになる。
アマゾンもアップルも電子書籍制作者向けに確認用のビューワー(パソコンの画面上で疑似的に端末の表示を再現するもの)を用意はしているけどね。
テキスト・エディタを用意しよう
キミが本格的に電子書籍に取り組んでいこうとするなら、キミ自身が電子書籍を読む人にならなくてはいけない。小説家になりたいと言っているやつがいちども小説を読んだことないと聞いたら、
「アホか」
と思うだろう。電子書籍を書きたい作りたいやつも同様である。電子書籍で読みたいのは小説かもしれないが、それは紙の本を読むのとは、またちがう体験なのだ。
さて、基本的なネット環境させあれば、電子書籍制作に高価な機材やアプリの類は必要ない。紙と鉛筆のかわりになるもの、デジタルでの執筆環境さえ整えれば、それで原稿を書いて、あとで電子書籍として端末で読めるように変換するだけだ。
執筆するのは、パソコンに入っているメモ帳の類でじゅうぶんである。できれば、テキスト・エディタを用意した方がいいけど。もちろん、iPadで執筆してもかまわない。
【参考文献】
『ブログの書き方 稼ぐ文章と収入の作り方』 ⇒ 詳細はこちら
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電子書籍制作にかかる費用:作業編
作業環境が整い、いよいよ電子書籍制作に入る段階で、個人出版といえども、作業のいくつかを外注するという方法もある。個人の場合、最初の盛り上がりに比して、完成までにいたらないケースが多い。
外注するかどうかべつにして、作業の流れをつかむことにもなるので、ひと通り作業の段階を見てみよう。
経費がかからないように思いがちな企画段階が大事
以下に示す電子書籍の制作過程はあくまで目安で、並行して進むところもある。
(1)企画
(2)取材・資料集め
(3)執筆
(4)編集
(5)校正
(6)装丁・デザイン
(7)製本(電子書籍化)
(8)出版(登録作業)
このうち、(1)と(2)はひっくるめて考えてもいいのだが、
「こういう本を作りたい」
というアイデア(思いつき)の部分とそれを形にするための準備段階を分けてみた。経費の質もかわってくるしね。プロの世界だと編集者がかかわってくる部分で、企画書としてまとまる。シロウトはこの段階をとばしたり、お金はかからないと思っていたりするけど、じつは最重要パートになる。
表紙は外注することが多い
世の中の人は本は「著者」が書いていると思っている人が多いけど、ビジネス書やタレント本の類は、ゴーストライターが9割とも言われている。インタビューを受けるだけで書かない。個人出版でも任してもいい。
書かれた原稿は、読みやすく、わかりやすく、あるいは、アピールするように「編集」がなされ、誤字脱字をチェックする「校正」が入る。自分でやってもいいが、出版業界では専門家がやるパートだ。
「装丁」は紙の本の用語で、電子書籍だと主に表紙をどうするかって話になる。売れ行きはタイトルと表紙で決まるので、個人出版でもここだけ外注するケースが目立つ。
製本や出版は、KDPならKDPに登録する作業になる。無事、出版したあとは、
(9)宣伝・プロモーション
(10)販売管理
があるが、これもある程度は、KDPなどの販売サイトがある程度、協力してくれる。
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電子書籍を個人で出版するには:最初のステップ
個人で電子書籍を出版したいとなったときに、はじめにやらなくてはいけないことはなんだろうか。
それは原稿を用意することである。
なにをあたりまえな、と思うかもしれないが、これの意味するところは、従来の出版とは少しちがう。
電子書籍用のアカウント開設時に原稿を要求される
ごく単純化して言うと、電子書籍の場合は原稿と表紙の画像さえあれば、早ければ、その日のうちに出版されてしまうのだ。
電子書籍の個人出版には、アマゾンのKDPや楽天のKOBOといった仕組みを使う。アカウント登録じたいは簡単で、ブログを開設したりするのと大差ない。
で、このときに、出版しようと思っている原稿と画像のファイルを要求される。それをアップロードしてしまうと、すぐに出版準備(原稿の審査)が開始される。
事前に会員登録的なことをして、そこから原稿を作るのではないんである。
「さあ! これから、作家として、がんばるぞ!」
なんて、こころがまえをするための儀式的登録作業なんてない。あっけなく出版され、有名な作家の本といっしょに、アマゾンや楽天のブックストアにならんでしまうのだ。
結果的に、これは合理的なシステムで、個人出版でなにが最大の問題かというと、出版したい気持ちだけで、原稿を書き上げることのできない著者志望が大半だからだ。
電子書籍の製本とはEPUBファイルに変換すること
したがって、自分にはもうすでに書きためた原稿があって、世間に知られていないだけで、それは大傑作で、ということなのであれば、すぐにも作家の仲間入りということになる。ま、インディーズ系というくくりにはなるけどね。
ただ、ちょっと注意が必要なのは、用意する原稿というのが、電子書籍にふさわしいファイル形式になっていないといけない。
これが電子書籍における「製本」作業だ。
厳密には、2段階に分かれていて、最終的に、アマゾンならアマゾン、楽天なら楽天が自社の電子書籍端末にふさわしい形式に変換するのだから、これは登録するときに、勝手に向こうでやってくれる。
その変換係であるコンピュータに理解できるファイル形式で提出する必要がある。
それがEPUBと呼ばれる仕様だ。
テキスト・エディタで執筆したデジタル原稿をEPUBファイルに変換する。
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